一般にヴィンヤサヨガといえば、呼吸と動作を連動させて途切れることなく動いていくスタイルのヨガを指します。
そもそもヴィンヤサとは、 サンスクリット語の「vi=適切な[特別な]方法で」と、「niyasa=配置する」からできた 言葉です。スタート地点から適切にエネルギーを導き、途切れることなく歩を進めて昇り、 やがて終焉へと向かう、一連の進化のステージです。
ヴィンヤサでは「始まり~中間~終わり」という流れを大切にします。ひとつのアサナの中にも「始まり~中間~終わり」があり、その「終わり」は次のアサナ の「始まり」に連結していきます。今の在り方が、次に起こることに影響を及ぼしていく、 つまり、「今ここ」の積み重ねが、全体に及ぼす”うねり”と化して、全体としてひとつの大きな「始まり~中間~終わり」を形成していきます。
たとえば、季節。ある日突然に夏が終わり、次の瞬間にいきなり秋が始まるわけではありません。土の中、水の中、大気の中。人目に触れずとも、秋の支度は密やかにずっと以前から始まっています。あるいは、日の出と日の入り。月と太陽、陰と陽の明け渡しも突然ではなく、マジックアワーは少しの時間をかけて繰り広げられます。「中間」は刻一刻と変容し続けて、始まりと終わりとを繋ぎ、ふと気づいたら、どこが始まりでどこが終わりなのか分からないほどです。境界線がボヤけていく。陰でもなく、陽 でもなく、ひとつになるための中間。ONENESS。 世界の美しさはそこにあると思います。儚く、あるいは逞しく変化し続け、咲き誇り散り誇り、次のものへと紡いでいくエネルギー。
そうした世界の在りようを一番慣れ親しんでいる己の体で体現するのがヴィンヤサです。自分の体と、自分の外の世界とで、見えない糸を紡ぎながら、一緒に音楽を奏でていく。時にどんどん力強く、時にテンポを少しずつゆっくりに、修整し、調整しながら。さまざまに彩って。世界の息遣いと自分の息遣いのリズムを合わせて動き続けていく。「始まり~中間~終わり」の連続に「今ここ」を見出す。それがヴィンヤサの世界観であり、ヴィンヤサのマインドフルネスです。